2021年04月28日16:43
日射遮蔽の肆 外装材の色は超重要≫
カテゴリー │家造りの役に立つお話│パッシブデザインについて
こんにちは。ツチヤ・フソウホーム 設計の石田です。
前回までは、窓からの日射遮蔽についてお話してきました。
今回は、それ以外の部位。屋根と外壁の日射遮蔽についてお話していきます。
屋根や外壁の日射遮蔽は、窓のように軒や庇、日射遮蔽部材で遮ることは出来ません。
それでは、屋根や外壁の日射取得率を低くするにはどうすれば良いのか?
答えは‘外装材の色を淡色(薄い色)にする’ことです。
屋根や外壁の日射取得率に特に影響するのが、外装材の色です。
これは屋根が瓦でもスレートでも鋼板でも、外壁がサイディングでも鋼板でも塗り壁でも同じです。
窓ガラスではガラスに応じた日射取得率の数値がありましたが、屋根や外壁の日射取得率は、屋根・外壁の構成(木材/断熱材)と外装材の日射吸収率で決まります。
断熱材を何にするかよりも、外装材の色を何にするかの方が、日射取得/遮蔽に関しては大きく影響します。
申請上の外皮計算では、外装材の色に関係なく、日射吸収率は定数で計算されるので、申請上の屋根や外壁の日射取得率は実際値とは異なります。
※定数の日射吸収率は大きめに設定されているので、夏期は実際よりも不利に、冬期は有利になっていると思います。
遮熱塗料されたスレートやガルバリウム鋼板のカタログには日射反射率という数値があります。
日射反射率は日射吸収率の反対に位置する数値で、その名の通り、日射を吸収せずに反射する割合を表しています。
例えば、日射反射率が0.4とあれば、日射吸収率は1.0-0.4=0.6となります。
黒に近い濃色よりも、白に近い淡色の方が、日射反射率が高くなるので、日射吸収率は低くなります。
外装材の色ごとの日射吸収率を見てみます。
野池政宏氏著 パッシブデザイン講義より引用
上の数値は特に遮熱塗装をしていない材料の日射吸収率の目安です。
スレート/瓦と金属/ガルバリウム鋼板で数値が違うのは、表面の質感が日射吸収率に影響する為です。
表面が平滑でツルツルしている程、日射を反射しやすく、ザラザラしているほど日射を吸収しやすくなります。
よくガルバリウム鋼板と瓦でどちらが暑くなるのか?とお客様に訊かれますが、「同色の場合、通気層をきちんと設けてあれば、ガルバリウム鋼板の方が日射を通しにくいので涼しくなります。」とお答えしています。
ここまで書いたことは、純然たる事実なのですが、なかなかお客様には理解して頂くのが大変な部分となります。
それは、インターネットで間違った情報が蔓延していることも原因の一つです。例えば、『黒い外壁 デメリット』と検索したとします。
すると出てくるほとんどの記事で、『黒くしても断熱をしっかりすれば影響はない』とか、『通気層があるから室内には影響しない』といった間違った内容が書かれています。
1つや2つならまだしも出てくる記事のほとんどでそのように書かれていては、一般のお客様が信じてしまうのも無理はありません。
もう一度言います。>黒い屋根や外壁の家は、白い屋根や外壁の家に比べて暑くなります。
こうやって言うと、いやいや、うちは黒い屋根・外壁だけど暑くないよ。という方がいるかもしれません。
それでは、言い方を変えてみます。黒い屋根や外壁の家は、白い屋根や外壁の家と比べて冷房負荷が大きくなるので、冷房費が多くなります。
ある程度の断熱性能(UA値0.87程度)を有した建物で、畳数通りの大きさのエアコンを可動させていれば、冷房が効かないことはありませんが、黒い家ではエアコンが強運転する時間が長くなるか、エアコンの設定温度を下げる必要が出てきます。
結果として冷房費が上がります。
では、実際に外装材の色によって、通気層や室温にどのような影響があるのか。
具体的な資料をいくつか紹介していきます。
日本建築学会技術報告集第13巻第26号428P 外断熱外装材の壁体構成による膨張収縮より抜粋
上は外装材の膨張収縮について書かれた論文の一部ですが、その中で茶系と白系の外壁の裏面の温度を表したものがあったので、抜粋させて頂きました。
これは札幌で行われた実験の様ですが、浜松より日射量が少ない札幌でも、夏の南面の外壁の裏面(通気層内の部分)で13℃の差が生じています。熱の移動は必ず高い所から低い所へ移動します。
この時温度差が大きい程、動く熱量も多くなります。
それを理解していれば、『断熱材がきちんと施工されていれば問題がない』というのがおかしいことが分かります。
そもそも外装材の色が白だろうが黒だろうが断熱材はきちんと施工されているのが当たり前です。
その上で、最低でも13℃(西面/北面はさらに大きくなる)の温度差が生じているんです。
温度差が大きくなれば熱の移動が大きくなるんです。
壁で充填断熱の場合、既に柱間いっぱいに断熱材が入っています。
これを断熱性能の向上でなんとかする為にはさらに性能の良い断熱材に替えるか、外張り断熱で付加断熱するしかないはずです。
外壁の色を黒くしたから断熱材の施工方法を変えるという会社はほとんどないと思います。
当社でもそこまではしません。
ですから、外壁を黒くすると白い家よりも暑くなるんです。
黒い外壁が悪いと言っている訳では決してありません。
私も黒くてスタイリッシュな外観の家は好みですし、実際に設計したこともあります。
冷房費が年間数千円程度上がっても外壁を黒くしたいお客様はいらっしゃると思いますし、その想いは尊重するべきだと思います。
問題なのは、黒くしても熱的なデメリットがないという誤った情報をお客様に与えて、お客様を誤解させたり、人目にふれないような形状の屋根に何の意味もなく黒い外装材を使うことだと思います。
いまさらですが…
このブログは浜松市及びその周辺市町村で新築住宅を計画することを前提に書いております。
今回の外装材の色による日射遮蔽や今後お話したいと思っている断熱性能については、特に地域差がでるものだと思いますのでご了承ください。
次は黒い屋根・外壁が冬に有利か?というお話をしようと思いましたが、長くなってきましたのでまた次回に。
それでは、皆様、良い家を
前回までは、窓からの日射遮蔽についてお話してきました。
今回は、それ以外の部位。屋根と外壁の日射遮蔽についてお話していきます。
屋根や外壁の日射遮蔽は、窓のように軒や庇、日射遮蔽部材で遮ることは出来ません。
それでは、屋根や外壁の日射取得率を低くするにはどうすれば良いのか?
答えは‘外装材の色を淡色(薄い色)にする’ことです。
屋根や外壁の日射取得率に特に影響するのが、外装材の色です。
これは屋根が瓦でもスレートでも鋼板でも、外壁がサイディングでも鋼板でも塗り壁でも同じです。
窓ガラスではガラスに応じた日射取得率の数値がありましたが、屋根や外壁の日射取得率は、屋根・外壁の構成(木材/断熱材)と外装材の日射吸収率で決まります。
断熱材を何にするかよりも、外装材の色を何にするかの方が、日射取得/遮蔽に関しては大きく影響します。
申請上の外皮計算では、外装材の色に関係なく、日射吸収率は定数で計算されるので、申請上の屋根や外壁の日射取得率は実際値とは異なります。
※定数の日射吸収率は大きめに設定されているので、夏期は実際よりも不利に、冬期は有利になっていると思います。
遮熱塗料されたスレートやガルバリウム鋼板のカタログには日射反射率という数値があります。
日射反射率は日射吸収率の反対に位置する数値で、その名の通り、日射を吸収せずに反射する割合を表しています。
例えば、日射反射率が0.4とあれば、日射吸収率は1.0-0.4=0.6となります。
黒に近い濃色よりも、白に近い淡色の方が、日射反射率が高くなるので、日射吸収率は低くなります。
外装材の色ごとの日射吸収率を見てみます。
野池政宏氏著 パッシブデザイン講義より引用
上の数値は特に遮熱塗装をしていない材料の日射吸収率の目安です。
スレート/瓦と金属/ガルバリウム鋼板で数値が違うのは、表面の質感が日射吸収率に影響する為です。
表面が平滑でツルツルしている程、日射を反射しやすく、ザラザラしているほど日射を吸収しやすくなります。
よくガルバリウム鋼板と瓦でどちらが暑くなるのか?とお客様に訊かれますが、「同色の場合、通気層をきちんと設けてあれば、ガルバリウム鋼板の方が日射を通しにくいので涼しくなります。」とお答えしています。
ここまで書いたことは、純然たる事実なのですが、なかなかお客様には理解して頂くのが大変な部分となります。
それは、インターネットで間違った情報が蔓延していることも原因の一つです。例えば、『黒い外壁 デメリット』と検索したとします。
すると出てくるほとんどの記事で、『黒くしても断熱をしっかりすれば影響はない』とか、『通気層があるから室内には影響しない』といった間違った内容が書かれています。
1つや2つならまだしも出てくる記事のほとんどでそのように書かれていては、一般のお客様が信じてしまうのも無理はありません。
もう一度言います。>黒い屋根や外壁の家は、白い屋根や外壁の家に比べて暑くなります。
こうやって言うと、いやいや、うちは黒い屋根・外壁だけど暑くないよ。という方がいるかもしれません。
それでは、言い方を変えてみます。黒い屋根や外壁の家は、白い屋根や外壁の家と比べて冷房負荷が大きくなるので、冷房費が多くなります。
ある程度の断熱性能(UA値0.87程度)を有した建物で、畳数通りの大きさのエアコンを可動させていれば、冷房が効かないことはありませんが、黒い家ではエアコンが強運転する時間が長くなるか、エアコンの設定温度を下げる必要が出てきます。
結果として冷房費が上がります。
では、実際に外装材の色によって、通気層や室温にどのような影響があるのか。
具体的な資料をいくつか紹介していきます。
日本建築学会技術報告集第13巻第26号428P 外断熱外装材の壁体構成による膨張収縮より抜粋
上は外装材の膨張収縮について書かれた論文の一部ですが、その中で茶系と白系の外壁の裏面の温度を表したものがあったので、抜粋させて頂きました。
これは札幌で行われた実験の様ですが、浜松より日射量が少ない札幌でも、夏の南面の外壁の裏面(通気層内の部分)で13℃の差が生じています。熱の移動は必ず高い所から低い所へ移動します。
この時温度差が大きい程、動く熱量も多くなります。
それを理解していれば、『断熱材がきちんと施工されていれば問題がない』というのがおかしいことが分かります。
そもそも外装材の色が白だろうが黒だろうが断熱材はきちんと施工されているのが当たり前です。
その上で、最低でも13℃(西面/北面はさらに大きくなる)の温度差が生じているんです。
温度差が大きくなれば熱の移動が大きくなるんです。
壁で充填断熱の場合、既に柱間いっぱいに断熱材が入っています。
これを断熱性能の向上でなんとかする為にはさらに性能の良い断熱材に替えるか、外張り断熱で付加断熱するしかないはずです。
外壁の色を黒くしたから断熱材の施工方法を変えるという会社はほとんどないと思います。
当社でもそこまではしません。
ですから、外壁を黒くすると白い家よりも暑くなるんです。
黒い外壁が悪いと言っている訳では決してありません。
私も黒くてスタイリッシュな外観の家は好みですし、実際に設計したこともあります。
冷房費が年間数千円程度上がっても外壁を黒くしたいお客様はいらっしゃると思いますし、その想いは尊重するべきだと思います。
問題なのは、黒くしても熱的なデメリットがないという誤った情報をお客様に与えて、お客様を誤解させたり、人目にふれないような形状の屋根に何の意味もなく黒い外装材を使うことだと思います。
いまさらですが…
このブログは浜松市及びその周辺市町村で新築住宅を計画することを前提に書いております。
今回の外装材の色による日射遮蔽や今後お話したいと思っている断熱性能については、特に地域差がでるものだと思いますのでご了承ください。
次は黒い屋根・外壁が冬に有利か?というお話をしようと思いましたが、長くなってきましたのでまた次回に。
それでは、皆様、良い家を