2023年03月03日16:02
南面バルコニーからの日射取得を考える≫
カテゴリー │STAFFのつぶやき。│家造りの役に立つお話
こんにちは。ツチヤ・フソウホーム 設計の石田です。
現在、新築の打ち合わせが進行中のお客様。
家づくりに対して非常に熱心に勉強されているので、質疑内容も専門的でこちらも思いもよらないこともあります。
今回はその一例。
南面全面に計画しているバルコニーの打ち合わせ中。
お客様『シミュレーションでみるとバルコニーの手摺で少し陰になっているのが勿体ないですよね』
!?
盲点だった。。。
自分で作ったシミュレーションなのに。。。

見てみると確かに影になっている。。。
住宅の省エネ性能を表す“一次エネルギー消費量”を計算する為には、建物が冬にどれだけ日射を取得出来るのかを表すη(イータ)AHという数値が必要です。
このηAHは窓も大きさ、ガラスの日射進入率、方位係数、庇、などを計算して算出するのですが、ベランダの手摺り壁については計算に入れることはないんですよね。
しかし、実際には影になっているので日射取得は落ちています。
高さを低くすれば解消されそうですが、安全を考えるとやはりH1,100は欲しいところです。

手摺り壁の上部をハンドレール(3段)にすると結構解消出来そうですが、ご希望の外観にはならないのでNG。
それでは、日が陰る分でどれだけの熱量が遮られているのか、計算してみます。

まずは日が陰る部分の窓の高さを調べます。
窓の高さを50cm短くしましたが、影の長さに変化はなし。
55cm短くすると影に若干の変化があったので、手摺り壁で陰る部分は窓の下部50cm部分とします。
続いて建築場所の冬の日射量をNEDO(ネド)の日射量データベースで調べます。

建築場所を選択して。

壁面なので傾斜角90°の日射量を調べます。

続いて気象庁の過去データから浜松の冬の平均日照時間を調べます。
あと必要なのは窓ガラスからの日射進入率0.45。
窓から入る日射量は
窓の面積×窓ガラスの日射進入率×日射量×日照時間で求めることが出来ます。
今回の場合12月~2月に窓3か所の合計で330KWほどの日射が手摺り壁によって遮られていることがわかりました。
床下エアコンの暖房費で考えると3か月で3000円分ぐらいの熱が入ってこない計算です。
ことはこれを踏まえてコスト面と外観の好みからどうするのか考えて頂くこととなります。
その後の打ち合わせにて。。。
お客様『バルコニーを止めた場合のシミュレーションを。。。』
石『かしこまりました』
まずは基準としてバルコニーがある場合の“熱の貯金”を計算します。
先ほどは陰る部分の日射量を計算しましたが、今度は逆に入る部分の日射量を計算して。
そこから窓から出ていく熱を引いていきます。
窓から逃げる熱は
窓面積×窓の熱貫流率(断熱性能)×(室内の温度-外の温度)で計算できます。
外の温度は先ほどの気象庁のページで12月~2月の平均気温を調達し。
最終的にでた数値に12月~2月を時間換算したもの90日×24時間=2160時間を掛けると窓から出ていく熱の量がでます。
当初の計画のバルコニーありの場合
日射取得量 872KW
熱損失 462KW
熱の貯金は410KWでした。

こちらがバルコニーなしの内観イメージ。
日射取得を考えると窓は大きくしたいのですが、単純な引違いサッシのままだと転落防止の対策が必要となってくるので、下の部分をFIX窓、上部を引違いにしました。
こちらの場合
日射取得量 1181KW
熱損失 426KW
熱の貯金は775KWです。
しかし、この数値をそのまま採用するのは問題があります。
ベランダの手摺り壁がなくなったことで室内が外から丸見えです。
型ガラスなどで対策は可能ですが、一般的なレースカーテンで視線を遮った場合の試算をしていきます。

こうするとレースカーテン部分からの日射取得が減るので
日射取得量 1032KW
熱損失 426KW(レースカーテン分断熱性能が多少上がりますが10KWも変わらない)
熱の貯金は606KW
レースカーテンをFIX部分だけにしているので、それほど日射量も落ちませんでした。

こちらは下のFIXをやめて上の窓を大きくしたもの。
日射取得量 844KW
熱損失 319KW
熱の貯金は525KW
バルコニーありより窓は小さくなっても熱の貯金が増えているのが面白いところ。
手摺り壁で日射が遮られる部分は日射が入らないけど熱が出ていくのでその分不利になっていることがわかります。
最後に
お客様『将来後付けのバルコニーが出来るようにすると。。。』
石『かしこまりました。』

将来後付けのバルコニーに出れるように大きな引違を設置。
転落防止の危険があるので手摺を設置。
外から丸見えなので全面にレースカーテン。
日射取得量 716KW
熱損失 416KW
熱の貯金 291KW
と最も不利な結果に。
冬暖かくなるように日当たりの良い家をといった場合、単純に窓を大きくするのだけでは不十分だということがあらためてわかった検証となりました。
私は優先順位の1位に熱の貯金をもってこなくてはいけないとは考えていません。
検証の結果と意匠的な好みなどを合わせて吟味して頂ければ良いと思います。
ただし、こうした検証をしなければわからないこともあるので、検証自体は必要だと思います。
バルコニーの手摺り壁の影は今まで盲点だったので、教えてくれたお客様に感謝です。
現在、新築の打ち合わせが進行中のお客様。
家づくりに対して非常に熱心に勉強されているので、質疑内容も専門的でこちらも思いもよらないこともあります。
今回はその一例。
南面全面に計画しているバルコニーの打ち合わせ中。
お客様『シミュレーションでみるとバルコニーの手摺で少し陰になっているのが勿体ないですよね』
!?
盲点だった。。。
自分で作ったシミュレーションなのに。。。

見てみると確かに影になっている。。。
住宅の省エネ性能を表す“一次エネルギー消費量”を計算する為には、建物が冬にどれだけ日射を取得出来るのかを表すη(イータ)AHという数値が必要です。
このηAHは窓も大きさ、ガラスの日射進入率、方位係数、庇、などを計算して算出するのですが、ベランダの手摺り壁については計算に入れることはないんですよね。
しかし、実際には影になっているので日射取得は落ちています。
高さを低くすれば解消されそうですが、安全を考えるとやはりH1,100は欲しいところです。

手摺り壁の上部をハンドレール(3段)にすると結構解消出来そうですが、ご希望の外観にはならないのでNG。
それでは、日が陰る分でどれだけの熱量が遮られているのか、計算してみます。

まずは日が陰る部分の窓の高さを調べます。
窓の高さを50cm短くしましたが、影の長さに変化はなし。
55cm短くすると影に若干の変化があったので、手摺り壁で陰る部分は窓の下部50cm部分とします。
続いて建築場所の冬の日射量をNEDO(ネド)の日射量データベースで調べます。

建築場所を選択して。

壁面なので傾斜角90°の日射量を調べます。

続いて気象庁の過去データから浜松の冬の平均日照時間を調べます。
あと必要なのは窓ガラスからの日射進入率0.45。
窓から入る日射量は
窓の面積×窓ガラスの日射進入率×日射量×日照時間で求めることが出来ます。
今回の場合12月~2月に窓3か所の合計で330KWほどの日射が手摺り壁によって遮られていることがわかりました。
床下エアコンの暖房費で考えると3か月で3000円分ぐらいの熱が入ってこない計算です。
ことはこれを踏まえてコスト面と外観の好みからどうするのか考えて頂くこととなります。
その後の打ち合わせにて。。。
お客様『バルコニーを止めた場合のシミュレーションを。。。』
石『かしこまりました』
まずは基準としてバルコニーがある場合の“熱の貯金”を計算します。
先ほどは陰る部分の日射量を計算しましたが、今度は逆に入る部分の日射量を計算して。
そこから窓から出ていく熱を引いていきます。
窓から逃げる熱は
窓面積×窓の熱貫流率(断熱性能)×(室内の温度-外の温度)で計算できます。
外の温度は先ほどの気象庁のページで12月~2月の平均気温を調達し。
最終的にでた数値に12月~2月を時間換算したもの90日×24時間=2160時間を掛けると窓から出ていく熱の量がでます。
当初の計画のバルコニーありの場合
日射取得量 872KW
熱損失 462KW
熱の貯金は410KWでした。

こちらがバルコニーなしの内観イメージ。
日射取得を考えると窓は大きくしたいのですが、単純な引違いサッシのままだと転落防止の対策が必要となってくるので、下の部分をFIX窓、上部を引違いにしました。
こちらの場合
日射取得量 1181KW
熱損失 426KW
熱の貯金は775KWです。
しかし、この数値をそのまま採用するのは問題があります。
ベランダの手摺り壁がなくなったことで室内が外から丸見えです。
型ガラスなどで対策は可能ですが、一般的なレースカーテンで視線を遮った場合の試算をしていきます。

こうするとレースカーテン部分からの日射取得が減るので
日射取得量 1032KW
熱損失 426KW(レースカーテン分断熱性能が多少上がりますが10KWも変わらない)
熱の貯金は606KW
レースカーテンをFIX部分だけにしているので、それほど日射量も落ちませんでした。

こちらは下のFIXをやめて上の窓を大きくしたもの。
日射取得量 844KW
熱損失 319KW
熱の貯金は525KW
バルコニーありより窓は小さくなっても熱の貯金が増えているのが面白いところ。
手摺り壁で日射が遮られる部分は日射が入らないけど熱が出ていくのでその分不利になっていることがわかります。
最後に
お客様『将来後付けのバルコニーが出来るようにすると。。。』
石『かしこまりました。』

将来後付けのバルコニーに出れるように大きな引違を設置。
転落防止の危険があるので手摺を設置。
外から丸見えなので全面にレースカーテン。
日射取得量 716KW
熱損失 416KW
熱の貯金 291KW
と最も不利な結果に。
冬暖かくなるように日当たりの良い家をといった場合、単純に窓を大きくするのだけでは不十分だということがあらためてわかった検証となりました。
私は優先順位の1位に熱の貯金をもってこなくてはいけないとは考えていません。
検証の結果と意匠的な好みなどを合わせて吟味して頂ければ良いと思います。
ただし、こうした検証をしなければわからないこともあるので、検証自体は必要だと思います。
バルコニーの手摺り壁の影は今まで盲点だったので、教えてくれたお客様に感謝です。